吉野川のはじまりに出会える場所 ― いの町本川地区
四国を流れる大きな川、吉野川。下流の徳島県では「四国三郎」と呼ばれ、昔から人々の生活を支えてきました。ときには氾濫して恐れられ、ときには田畑をうるおす恵みの川として親しまれてきた存在です。
そんな吉野川のはじまりは、実は高知県いの町本川にあります。四国山地の山あいで生まれた一滴の水が、やがて大河となって太平洋へと注いでいくのです。
本川は、四国でも特に自然が色濃く残る地域です。ここでは川の美しさや森の豊かさだけでなく、人々の暮らしや文化、そして清流を楽しむ遊びに出会うことができます。
澄んだ水と四季を彩る自然

本川は石鎚山や瓶ヶ森といった高い山々に囲まれています。山に降った雨や雪が森にしみ込み、やがて湧き水となって川をつくります。それが吉野川の最初の流れです。
水は底まで透きとおり、手ですくってそのまま飲めるほど清らかです。(※必ず水質上大丈夫とは限りません。飲むのは自己責任で)夏でもひんやり冷たく、思わず顔を洗いたくなる気持ちよさです。
春は新緑がまぶしく、夏は深い森の緑が清流を包み込みます。秋には赤や黄色の木々が川面に映り込み、冬には雪景色に変わります。四季それぞれの姿を見せてくれるのも、吉野川の源流がある本川の魅力です。
川とともにある暮らし

本川に住む人々の暮らしは、昔から川と深く結びついてきました。
清らかな水にしか住めないアメゴ(アマゴ)は、地元では大切な食材です。炭火で焼いた塩焼きは香ばしく、川魚ならではの味わいが楽しめます。春になると山菜、秋にはきのこも採れ、自然の恵みが食卓を彩ってきました。
また、本川には「本川神楽」という伝統芸能が残っています。秋祭りなどで舞われるこの神楽は、水や山の神様に感謝を捧げる意味もあり、地域の宝物のように受け継がれています。
源流を歩いて感じる

本川は、ただ眺めるだけでなく「歩いて体感できる源流」でもあります
石鎚山や瓶ヶ森への登山道は、本川からアクセスできるルートが多くあります。沢沿いを歩くと、水が生まれる瞬間のような湧き水や小さな滝に出会えます。苔むした岩を越えながら進む時間は、自然と一体になるひとときです。
早朝の源流は霧に包まれ、静けさの中に鳥の声と水音だけが響きます。そこで過ごす数分間は、都会では味わえない贅沢な時間です。
清流で遊ぶ ― リバーアクティビティ

最近、本川は「川遊びが楽しい場所」としても人気が高まっています。
水遊び・川遊び
川の流れは比較的穏やかで浅瀬も多く、子ども連れでも安心。足を浸すだけでも気持ちよく、魚や虫を探して遊ぶのも楽しい体験です。
沢登り・シャワークライミング
ちょっとアクティブに楽しみたい人には、沢登りがおすすめ。冷たい水を浴びながら岩をよじ登る体験はスリル満点で、大人でも夢中になります。
SUPやラフティング(源流版)
下流の徳島では激流ラフティングが有名ですが、本川源流部はもっと穏やか。初心者でも楽しめるカヌー体験ができ、鏡のように澄んだ水面を漕ぎ進むのは格別です。

おわりに
高知県いの町本川地区。ここは吉野川のはじまりの地であり、森と川が織りなす美しい風景、人々の素朴な暮らし、そして川で遊ぶ楽しさが詰まった場所です。
一本の小さな流れがやがて四国を潤す大河になる―その奇跡を実際に見て、触れて、感じられるのが本川地区です。